「文学のピースウォーク」原画展,最初のギャラリートークに,
シリーズの装丁を手がけた
ブックデザイナーの中嶋香織さんが来て下さいました。
本屋に置く本は,お金を出して買っていただくものなので,
内容はもちろんですが,見た目というか,
本としての魅力にもこだわって選んでいます。そんな中,
「あ,この本すてき」「この本,かっこいい」と思うと,
「デザイン 中嶋香織」とあることが多く,
いつか,じっくりお話を聞いてみたいと思っていました。
中嶋さんは子どものころから,「物体」としての本に興味があり,
大学でインテリアデザインを学び,
その後,グラフィックデザインのおもしろさに目覚め,
広告や雑誌のデザインをする事務所に勤めながらも,
「やはり,本のデザインをしたい」という気持ちから独立し,
とくに児童書を手がけている編集者さんとのつながりで,
子どもの本のデザインをするようになったそうです。
デザインは,作品と画家さんと編集者さんとのやりとりが大切。
まずは作品を読んで,その作品の核というか,本質というか,
いちばんいいところを捉えて,
それが伝わる本のイメージをふくらませるそうです。
そして,そのイメージに合った画家さんに依頼するわけですが,
そのとき,あまり「言葉で言い過ぎない」「限定しない」ようにしているとか…。
画家さんにも,自由にイメージをふくらませて描いてもらいつつ,
お互いに作品のいいところを共有していくようにしているそうです。
そのうえで,表紙,帯,扉,目次…と
紙を選んだり,色を決めたりしていくわけですが,
そのときは,読者が物語にどう入っていくか,
その「入口の流れ」を考えて,作っていくとのこと。
今回の「文学のピースウォーク」の場合は,
すでに画家さんも決まっていて,絵もできているものもあり,
そういう場合は,物語の魅力と絵の魅力を合わせながら,
一冊一冊の個性をひきだすようにデザインしたそうです。
展示してある原画と,本になった表紙を比べつつ,
「少年たち」が「生きている」感じを出すために,
表紙からはみ出すようにレイアウトしたり,
逆に「流れ」を出すように絵が小さくなっても余白を生かしたり,
表紙,裏表紙2枚だった絵を1枚につないで,
「ひとつの世界」に広げたり……。
その具体的な工夫のありかたに,
ひとつひとつ納得できました。
ほんとうに,一冊ずつ大切に,そしてシャープに考えて,
デザインしてくださったのだと感じます。
その一方で,ご自分の赤ちゃん絵本
『おひさまさんさんおはようさん』や
『おつきさまなにみてる』(岩崎書店)について語るときは,
なんだかちょっと恥ずかしそうで,
それもまた,印象的でした。
あらためて,本は,いろいろな方に手をかけられて生まれてくるもの。そこに信頼を感じます。
「ものはいい顔をしていてほしい」という中嶋さんの言葉が
心に残りました。
さて,原画展は,26日まで続きます。
21日(木),26(火)の15時~「ピースCafe」も開催。
近くのケーキ屋さんのおいしいケーキを食べながら,
展示作品のことや,平和について,自由に語り合いたいと思います。
26日はあと2名。21日はまだまだ受付中です。
ぜひ,どうぞ。