先日,福島に行ってきました。
編集長を務めている雑誌「日本児童文学」で,
この秋9-10月号で
「「伝える」を問い直す」という特集を組むことになり、
その中で,日本各地の「伝える」ための施設を紹介することになったためです。
北海道は,アイヌ関連の施設,
東北は,気仙沼の震災関連の施設,
また,福島の原発事故関連の施設,
関東では,足尾銅山,
それから,第五福竜丸関連,
九州からは,三池炭鉱や長崎,
そして沖縄では沖縄戦関連の施設。
この春からずっと,編集委員ができるだけ足を運び,
また,北海道や沖縄については詳しい方に情報をいただき,
当該施設とも連絡を取り合ったりして,
記事をまとめました。
「伝える」工夫とむずかしさ,
「伝える」とはどういうことか,
を考えるきっかけになる場所ばかりです。
そのなかの一つとして,
先日,福島楢葉町にある
「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」をたずねました。
こちらの施設は,この3月,原発事故から10年目に
宝鏡寺の敷地内に作られた資料館です。
宝鏡寺の早川ご住職は,40年にわたり,原発の危険性を訴え,
裁判などを続けてきたのですが,
2011年,とうとう原発事故が現実のものとなり,
楢葉町も避難区域となり,地域も生活もこわれてしまったといいます。
くわしくは
「むら人たちは眠れない―早川篤雄と原発の同時代史-」
https://www2.rikkyo.ac.jp/web/reiko/social/common/pdf/20180709_01.pdf
というこちらの資料をぜひお読みください。
小さな資料館ながら,福島原発事故を,他のさまざまな
放射能被害と合わせて伝えようとしている姿勢が明確で,
人間がこれから核とどうかかわっていくのかを問いかけられます。
核にたいして,だれがどのように責任をもつのかということも,
考えさせられました。
早川ご住職は,80歳をすぎても,なおお元気で,
ひとりでも多くの方に見に来ていただきたいとのこと。
「年中無休・見学自由!」とのことですので,
東北に行く機会がありましたら,ぜひ,訪ねて見てください。
また,その後,近くの
「特定廃棄物埋立情報館 りぷるん福島」と
双葉町に昨年できました「東日本大震災・原子力災害伝承館」へ。
こちらは,どちらも国立の施設で,
まずその巨大さとテクノロジーを駆使した展示に圧倒されました。
映像,巨大パネル,模型,コンピューターゲームなどを駆使した,
ぴっかぴかの施設です。
しかし,伝承館では,津波被害と原発事故が混在して示されていて,
事故処理は,「福島イノベーション・コースト構想」推進の一環として位置付けられています。
原発事故で避難したという語り部さんのお話も,
いろいろともやもやするばかりでしたが,
議論できるような雰囲気ではありませんでした。
「りぷるん」や「原子力災害伝承館」では,
いったい何を伝えようとしているのか,
いやむしろ,何を隠そうとしているのか…?
もやもやもやもやしながら,帰ってきました。
双葉町は,いまなお帰宅困難区域です。
周囲は,草木にのみこまれた無人の建物ばかり。
双葉駅も無人駅でした。
この春から夏にかけては,
他にも,大牟田や長崎,足尾銅山などに行き,
民族とは,戦争とは,近代化とは何なのか…
ほんとうにいろいろ考えました。
「伝える」ということは難しい。
「日本児童文学」9-10月号では,
そのことを,徹底的に考えてみます。
この号は他にも,俵万智さんの短歌,
ひこ・田中さん,工藤純子さんの短編,
安田菜津紀さんのフォトエッセイ,
そして,貴重な論考がならびます。
どうぞ,お楽しみに。
…と,そのまえに,
「日本児童文学」7-8月号もまもなく出ます。
こちらの特集は,「幼なじみ」。
これまた,おもしろい号になっています。
入荷しましたら,またご紹介いたしますね。
5月から展示していました味戸ケイコさんの表紙原画も,
展示延長することになりました。
夏休み,8月末まで,「日本児童文学」フェアとともに,
コーナー継続しますので,
ぜひ,見にいらしてください。