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この一年をふりかえって ~児童文学の仕事~

2018.03.03 (土)

3月になりました。
学校や会社などでは,年度末。
一年のまとめの時期になりますので,店長奥山も,
店のほかに,ここ一年で手がけた仕事について,
すこし振り返ってみたいと思います。
…といっても,児童文学ということでは,
店とつながる仕事ではあります。

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まずは,なんといっても,昨年10月に刊行された
『「時」から読み解く世界児童文学事典』(原書房 5800円)です。
この本は,「時」というテーマで読むことのできる日本や海外の
児童文学作品を紹介する本で,全200冊のうち,
40冊ほどを,店長奥山が書きました。

じつは,この本の前に,『「もの」から読み解く世界児童文学事典』
『「場所」から読み解く世界児童文学事典』の2冊がすでに刊行されていまして,
そちらですでに紹介されている作品や作家とダブらないように,
5人の著者と編集者さんで,まず,作品選びから始まりました。
それが,かれこれ4年くらい前です。
候補作を全員で読み合って,これはぜひ読んでほしい!
という本を決め,それから手分けして紹介文を書いていきましたが,
その紹介文も,できるだけ批評としておもしろく,
でも,ネタばれにはならないように…などなど,
ずいぶん書き直し,ようやく本になったものです。

私が紹介した作品は,
上橋菜穂子作『精霊の守り人』,岩崎京子『花咲か』,中川李枝子作『らいおんみどりのにちようび』,森絵都『DIVE!!』,高楼方子作『十一月の扉』,芝田勝茂『夜の子どもたち』,ローベル『ふたりはともだち』,パウゼヴァング『みえない雲』などなど…40冊。
幼年ものから本格長編まで,ファンタジーから社会派リアリズムまで,
いろいろな作品について書かせていただきましたが,
それらが,「時とあそぶ」「時におどろく」
「時をさまよう」「時を動かす」…といった
コンセプトで並べられています。

単に,本を紹介するだけでなく,
読みものとしてもおもしろくなるように作られましたが,
はたしてどうでしょうか。

事典というだけあって,ちょっと高いですが,
図書館などには,ぜひ置いてもらえるといいなあと思っています。

夏くらいには,この本の制作秘話トークイベントもできたらと思っています。

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それから,11月には,
『10代のためのYAブックガイド 2』(ポプラ社 1800円)
もできました。この本は,2年前に出て好評だった

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こちらのブックガイドに続く2冊目。

監修は,金原瑞人さんとひこ・田中さんで,
27人の「本のプロ」が選んだ…と銘打たれています。
先の『時から読み解く…』は,「児童文学」に特化していますが,
こちらは,読み物だけでなく,詩集・歌集やノンフィクションなども
入っているところが,ユニークです。
また,ここ5年以内くらいの,新鮮な作品に限られているのも特徴です。

今回も,店長奥山は5冊紹介させていただきましたが,
パーキンス『モンスーンの贈りもの』,工藤純子『セカイの空がみえるまち』,みおちづる『翼もつ者』,ホーガン『バイバイ,サマータイム』,山下賢二『ガケ書房の頃』。

27人のいろいろなかたちで本にかかわっている人たちが,
どんな本を選んでいるかも興味深い。
「10代のため」となっていますが,むしろ,大人が読んでも,
かなりの読み応えの本ばかりです。

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そして,最後は,この2月に刊行が開始された
「児童文学10の冒険」です。

これは,日本児童文学者協会の70周年企画のアンソロジーで,
90年代以降の日本の児童文学の受賞作などを集めています。
その1巻目『明日をさがして』(偕成社 2200円)の
巻末の解説を書かせていただきました。

この巻には,
伊沢由美子作『走りぬけて、風』を中心に,
越水利江子『風のラヴソング』,長崎夏海『トゥインクル』
あさのあつこ「ぼくらの足音」(3月に原画展を予定している
「おはなしのピースウォーク」シリーズの一作)などの作品が
収録されていて,もちろん,それらの作品が出た当時に,
私も読んできましたが,今回,解説を書くにあたって,
あらためて読んでみると,これが,どれもいいのです。

90年代以降の,なんとなく閉塞的になっていく時代を背景に,
家族や学校や町の生きづらさを描いて,けして派手な作品ではないのですが,
どれも,なんとなくじーんとくる。
このじーんとくる感じをなんとか伝えたくて解説を書きました。

「児童文学10の冒険」は,この1巻目のあと,
『家族のゆきさき』『旅立ちの日』『自分からのぬけ道』など,
印象的なテーマで,日常ものからファンタジーまで,
本格名作がならびます。

また,表紙絵は,絵本『うきわねこ』のすてきな絵で知られる
牧野千穂さん。
とてもきれいな本になっているのも,うれしいです。

こんなわけで,この一年も,いろいろな本について,
いろいろ書きました。
いやー,児童文学っていいですねー,という気持ちです。

そんな気持ちをより広く伝えるべく,
4月には,読売カルチャーで,こんな一日講座もいたします。

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「孫と楽しむ」とありますが,それは,ひとつの象徴で,
親とか,先生といった子どもに身近な存在だけでなく,
いろいろな立場の大人の方が,子どもの成長に合わせて,
絵本や児童文学をいっしょに楽しむにはどうしたらいいか。

そんなことを,考えてみたいと思っています。
よかったら,ご参加ください。